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たまにはこんな日もいいよね
たまにはこんな日もいいよね_c0012846_10215375.jpg渋谷駅からほど近いそのお店は、
少しばかりのカウンター席と、
片手で数えられるほどのテーブル席があるだけの、
30人も入れば一杯になるような小さな居酒屋。

特別、料理が美味しい訳ではないし、
店員のサービスがよい訳でもない。


それでもそのお店にはたまに行く。
なぜなら24時間営業だから・・・。



朝早くに行った時などは「こんな時間に客はいるのだろうか?」と思うが、
予想に反してどんな時間帯でもそれなりに賑わっている。

平日だというのに常連客が多いらしく、
カウンターでは見知らぬ客同士が笑顔で話し込んでいる。

眠気まなこのサラリーマンが、機嫌の悪そうな顔で出社する姿を横目に
早朝から居酒屋に入っていく自分の姿は
「ちょっと世間からはみ出たアウトローなダメ人間」
的な感じさえするが、そんな事は気にしない。

たまにはこんな日があってもいいものだ。


初めてこのお店に来た時、忘れることの出来ない衝撃があった。
それは『厚焼き玉子』を頼んだ時の事。










冷たいまま出てきた。








『焼き』という言葉から一般的に連想する『温かさ』は微塵もなく、
冷めているというよりは冷えている厚焼き玉子だった。 
作った物が時間が経った事による冷めた状態のそれではなく、
あきらかに冷蔵庫で冷やしていた状態だった。

なんならお皿まで冷えている。


こんなところでもクールビズ。



商品を提供するのは自分の母親ほどの年齢のおばちゃんで、
その姿に一片の迷いもない。
不思議なもので、そこまで堂々と冷えた厚焼き玉子を出されると、
「そうそう、厚焼き玉子と言えばこれだよね!」とさえ思えてくる。

鎬を削る大手チェーン店や、食に拘る創作居酒屋とは違い、
こういった店では注文が入ってから作るのではなく、
「作り置きしたものを冷蔵庫で保存する」というのも分からなくもないが、
それを「チンする」という一手間加える発想までは持ち合わせていない。

ましてやそれに対して文句を言う客もいない。


ビバ・クールビズ。


このお店では接客を担当するのは全員おばちゃんで、
厨房に入るのはおじさんと決まっている。

朝の10時頃になるとシフトの交代時間なのか、
新しいおばちゃんが入ってきて、おばちゃん同士が交代する。
おばちゃんが仕事を上がって、おばちゃんが仕事を始める。

おばちゃんとおじさんで回っているお店。
そこから生まれる化学反応に「チンする」発想は含まれないない模様。

僕等が頼んだ食事が間違って隣のテーブルに提供されていたが、
人生の粋も甘いも嗅ぎ分けたおばちゃんはそんな事では動じない。

「いつもの事よ!」といった様子で高らかな笑い声と共に、
まるで何事もなかったかのように僕等のテーブルに差し出してくる。
事の一部始終を見ていた僕が、おばちゃんに笑顔を見せるも
「なにか問題でもあるの?」といった様子で微動だにしない。


それでも許される雰囲気がこのお店にはある。


この写真を撮っている時、おばちゃんの
「この子は何をやっているのかしら?」という冷たい視線を感じたが、
そんなのは厚焼き玉子の冷たさに比べたら痛くも痒くもない。



クドイようだが皿まで冷たい。






でもまた行くからね、おばちゃん。
by cultstar | 2006-06-08 10:21 | 日々笑進
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